前回のPt.3では、デッキに空いていた“謎の穴”をエポキシ樹脂でしっかり埋め、さらに両面をサンダーで滑らかになるまで整えました。
そしていよいよ今回から、デザイン工程の本番へ突入します。
実は今回、キャラクターを使わずテキスタイルのような“ファブリックパターン案”も候補にありました。しかしデッキを前にして「縦方向の空間をもっと大胆に活かしたい」という感覚が強まり、最終的に直線的なバックグラウンド × バーチカル構成のキャラクターデザインという、よりダイナミックな方向を選択しました。
まずはAdobe Illustratorでフラットデザインを構築し、原寸大プリントで実物とのバランスを確認します。画面上では整って見えても、実際のデッキに重ねると“間の取り方”や“密度感”が意外と変わるので、この工程は視覚的な最終確認として欠かせません。
続いて、背景とキャラクターの型紙をそれぞれプリントアウトし、まずはバックグラウンドの直線パターンをデッキへトレースダウン。
描画にはアクリルガッシュを使い、ドライブラシ(擦れ表現)で質感を与えました。
背景が入った段階でも、どこか夏の空気をまとったような軽やかさが加わり、デッキの印象が大きく変わりました。キャラクターが入ったときにどう見えるのか、個人的にも仕上がりが楽しみです。
■アクリル絵の具とアクリルガッシュのちがい
ここで使っているアクリルガッシュについて、少しだけ補足しておきます。
同じ“アクリル”という名前がついていても、実はアクリル絵の具とアクリルガッシュでは性質がかなり異なります。
アクリル絵の具
顔料の含有率が低く、透明水彩のように下の色を透かす性質があります。乾燥するとアクリル成分だけが残り、ボンドが固まったときのようなしなやかな塗膜になるため、剥がれにくいのが特徴です。アクリルガッシュ
顔料が多く、不透明水彩や顔彩のように“隠蔽力が強い”タイプ。発色が良く、平面デザインをするときに頼りになる質感です。ただし、顔料の割合が高いぶん乾燥後の結びつきが弱く、極度な乾燥ではひび割れが起きることもあります。
どちらにも匂いがほとんどないというメリットはあるものの、FRP(繊維強化プラスチック)と相性が良いとはいえず、強度の面では弱さが残るのも事実です。
スケートボードの表面は、ライディングのひねりやテンションが常に加わるため、一般的にはアクリルガッシュはあまり向いていません。それでも今回あえてアクリルガッシュを使用しているのは、
「アクリルガッシュでも安定した塗膜を作る方法」を今後紹介したいと思っているためで、今回はその前段階の“背景描き”で作業を区切っています。
次回はいよいよ、メインとなるキャラクターパートをアクリルガッシュで描いていきます。背景との重なりがどんな雰囲気を生むのか、引き続きご覧いただけると嬉しいです。


